症例42当時50歳 男性
左手第4中節骨遠位端部複合骨折
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この患者さんはラグビーをしている時に骨折して しまい、翌日に受診されました。 ボールが直撃したそうなのですが、試合中の出来 事であるため詳細はあまり覚えていないという事 でした。 骨折名をみると、複合骨折も整復できるんだと驚 かれるかもしれませんが、整復は可能です。 ただし複合骨折の場合は、レントゲン写真を見な いと整復は難しいです。 前回お話ししたように、「骨折部の確認」をしっ かりすることでレントゲン検査をしなくても整復 は可能なのですが、骨端部に限局性圧痛がある場 合や2方向に限局性圧痛がある場合は、レントゲ ン写真を確認したうえで整復するのが望ましいで す。 ちなみに今回の複合骨折はV字状骨折で、写真を よーく見ると骨片が掌側転位している骨折でもあ るということがわかるかと思います。 そして今回の骨折の症状は 限局性圧痛(+)、腫脹(±)、皮下出血(+) 神経・大血管損傷(−)、皮膚損傷(−) 転位(++)→尺側端は掌側(+)、 橈側端は背側(+)、 特筆すべき持病などはなし だったので整復しました。
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今回のレントゲンは、他指が重なってしまい確認 がしづらい為、更に2週間後の写真も掲載します
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結果から言うと、「Repo perfect」 でした。 中節骨全体が少し伸びて細長くなり、掌側転位し ていた骨片が引っ込んでいるのが確認できるかと 思います。 基本的に複合骨折は操作が複雑で説明がより難し くなるのですが、参考になればということで説明 させていただきます。 今回は触知の段階で尺側骨片が顕著に掌側転位し ている事がわかりました。 そしてこの転位度合いだと直圧が必要だと判断し 整復に臨みました。 緻密な操作を必要とす骨折であればある程、成功 するかどうかは整復時の把持方法や把持する場所 で決まります。 なので骨折整復は、しっかり考察し操作イメージ を固めてから臨むことで成功する可能性は高まり ます。 この骨折の場合は左手であり、尺側骨片をメイン とした操作なので、左手で末節骨を第1、2指で 斜めに把持しました。 この時掌側を把持している第2指の末節骨橈側面 を骨片に密着させておきます。 あとは牽引しながら骨片を押し込むことで整復完 了です。 以上、第42症例目の整復レポートでした。 と言いたいところなのですが、今回の症例、レン トゲン写真で何か気付きませんでしょうか? 今回の症例、第4指PIP関節に注目してみてく ださい。 特に整復前のレントゲンがわかりやすいです。 皮膚の輪郭から、PIP関節部が腫脹しているの がわかるかと思います。 実はこの患者さんは、複合骨折と同時に第4指P IP関節脱臼を併発していたらしいのですが、ご 自分で引っ張って戻したそうです。 自己整復後にDIP関節の異常に気付き受診され ました。 今回は視診の段階でわかったそうなのですが、本 人も自己整復後に問題がなかった為に、医師に尋 ねられるまでは脱臼の話は特にしていなかったそ うです。 この患者さんはROM訓練は行わず、物理療法の みで完治されましたが、脱臼の事を聞いていたの で、そちらの指導管理も一緒にできて早期治癒に 役立ったのを覚えています。 骨折や脱臼という大けがの場合、我々もそちらに ばかり意識がいってしまいがちです。 併発症は放置すると予後に悪影響を与えるため、 主訴以外の事でも気になったことは確認するとい うことが非常に大切だと改めて学んだ症例でした 以上、第42症例目の整復レポートでした。