症例32当時50歳 男性
左手第3末節骨骨折
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今回は、外見上大したことが無さそうだったのに バッチリ折れていた症例を掲載させて頂きます。 日常生活において、手をぶつけたり挟んだりする 事は多く、なかなか痛みがひかないなと思ってい たら骨折だったと判明するケースは多いです。 肘や肩、股関節などの大きな部位の損傷の場合は まず整形外科を受診しようと考えるのが一般的に なりました。 大きな部位は損傷を起こすと、目に見えて「これ はやばい」とわかります。 それに比べて手先や足先は部位の小ささも影響し て、外見上では大したことが無いように見える事 も多いです。 しかし、足の指なら多少の変形は日常生活におい て問題ない事が多いのですが、手先の骨折は機能 障害を残すとその後の生活が酷になる恐れがあり ます。 そして、ぶつけたり突き指した時にあからさまな 変化が無い場合は「整形外科は大げさ」だと考え ることは多いとおもいます。 確かに骨はそう簡単には折れません。 発生頻度が低いので、もしかしたら折れているか もと思ってぶつける度にレントゲンを撮りましょ うというのは現実的ではないと思います。 かねがえ接骨院ではレントゲンを撮らずに骨折の 疑いがあるのかをある程度判断する事ができるの で、ぶつけた場所の痛みが鋭かったり、何日も続 く場合は遠慮なくご相談ください。 この患者さんは前日にドッチボールを行い、突き 指をしてしまいました。 受傷時に激痛があったものの、その後はそこまで 痛みはなく、たまにやってしまう一般的な突き指 だと思いその日は受診されませんでした。 翌日も腫れてる感じはあまりなく内出血もなかっ たため、少し強めに突き指しただけだと思ってい たそうです。 しかし仕事中に物を掴もうとした時やタイピング の時に、突き指したところが鋭く痛むために受診 され、骨折が発見されました。 ちなみに末節骨(爪があるところの骨)の骨折は 爪下出血斑という症状があると骨折を強く疑うの ですが、この方にはありませんでした。 私(院長 鐘ヶ江)もこの頃はまだまだ頭でっか ちだったので、結構なズレを伴うレベルで折れて いるのに見た目が他の指とほとんど変わらない事 にショックと怖さを感じたのを覚えています。 今でこそしっかり見極められますが、この当時の ままの知識や経験で開業していたらきっと「大丈 夫です、折れてません」と患者さんに自信満々に 言っている可能性があったと思います。 ちなみにこの骨折の転位がうまく整復できないと 機能障害としてはマレットフィンガーのようにな ります。 洗顔の時などのちょっとした時に指が引っかかる 程度の影響なのですが、マレットフィンガー?型 の患者さんに伺ったところこれが意外と煩わしく てイライラするそうです。 そして足とは違い手には役割が沢山あるため、整 復するからには絶対に「Repo perfec t」にしてやる!と思って臨んだのを覚えていま す。 ちなみに今回の骨折の症状は 限局性圧痛(+)、腫脹(±)、皮下出血(−) 神経・大血管損傷(−)、皮膚損傷(−) 転位(+)→掌屈(+) 特筆すべき持病などはなし だったので整復しました。結果から言うと、「Repo perfect」 でした。 掌側に曲がっていた骨片が他の指のように真っ直 ぐ戻っているのがわかるかと思います。 ちなみに末節骨の整復は柔道整復理論の教科書で は、さも簡単な風にサラッと書いてあります。 実際操作は簡単です。 今回の症例も「つまんで引っ張りつつ背屈」する だけで整復出来ました。 しかし文面の簡潔さに惑わされないようにしてく ださい。 写真でも読み取れると思いますが、掌側の皮膚か ら骨までには結構な厚みがあります。 特に男性で指の太い方は掌側の組織は分厚く、掌 側把持が非常に困難です。 引っ張っても全然転位が除去できない事が多いう えにズレたままだと機能障害がのこるので、指先 の骨折は軽く考えてはいけません。 戻すのが難しいからこそすぐに手術を提案される 事も多いです。 しかし徒手整復で戻せる可能性がある以上は、ま ずは徒手整復を試みてみるべきだと私は考えてい ます。 指先の骨折で手術を提案されて悩んでいる方は、 遠慮なくご相談ください。 以上、第32症例目の整復レポートでした。
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